多汗症(脇汗など)
多汗症(脇汗など)とは
多汗症は、脇の下など過剰に汗が出る症状のことです。普通の人よりもたくさんの汗が出るため、日常生活に支障をきたすことがあります。 具体的な症状としては
- 服に汗じみができやすい
- 人前で発表したり、電車の吊り革を持ったりするときに緊張して汗が出る
- 制汗剤を使っても汗が止まらない
- 勉強や仕事に集中できない
これらの症状が6ヶ月以上続く場合、多汗症の可能性があります。
多汗症の原因
- 交換神経の過剰な働き
汗の分泌は自立神経の一つである交換神経によって調整されています。何らかの原因で交感神経が過剰に働くと、汗腺が活発になり、必要以上に汗をかくことがあります。 - 精神的なストレスや緊張
ストレスや緊張により交感神経が刺激されると、特に精神性発汗(感情による発汗)が増え、脇汗が多くなることがあります。 - エクリン腺とアポクリン腺の活動
・エクリン腺:全身に分布している汗腺で、主に体調調整のために汗を分泌します。
・アポクリン線:脇や陰部など特定の部位にあり、粘り気のある汗を分泌します。
アポクリン腺の発達が原因で「わきが(腋臭症)」の原因にもなります。
多汗症は、主にエクリン腺の働きが過剰になることで引き起こされますが、アポクリン腺の発達も関係することがあります。 - 原因不明の「原発性多汗症」
特に明確な原因がなく、思春期ごろから発症することが多い。これは遺伝的な要因も関係していると考えられています。 - 病気や薬の影響(続発性多汗症)
糖尿病、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、更年期障害、神経疾患などが原因で多汗になる場合もあります。また、一部の薬(抗うつ薬、ホルモン剤など)の副作用として汗が増えることもあります。 - 環境や生活習慣の影響
・暑い環境や運動:体温調整のために汗の分泌が増えます。
・食生活:辛いものやカフェインの摂取が交換神経を刺激し、多汗を引き起こすことがあります。
多汗症の種類
大きく分けて2種類があります。それぞれ原因や特徴が異なります。
①原発性腋窩多汗症(特発性腋窩多汗症)
明確な病気が原因ではなく、交感神経の過剰な働きによって発汗が増えるタイプです。遺伝的要因が関与していると考えられています。
<特徴>
- 思春期頃に発症しやすい
- 対称性(左右対象)に発汗が増える
- 睡眠中は発汗しない(ストレスによる発汗が多いため)
- 家族に同じ症状の人がいることが多い(遺伝的傾向)
- 特定の部位に症状が出ることが多い
②続発性腋窩多汗症(薬剤性多汗症)
病気や薬の影響で発汗が増えるタイプ。全身性の発汗を伴うことが多いのが特徴です。
当院での治療
多汗症の治療には、いくつかの方法があります。症状の程度や患者さんの希望に応じて、適切な治療法が選ばれます。
外用薬による治療(保険診療)
ガイドラインで最も推奨度の高い治療方法で、抗コリン薬の外用(ラピフォートワイプ®︎とエクロックゲル®︎)があります。
毎日継続して使用する必要があります。
脇ボトックス注射
上記外用薬での効果が乏しい場合、ボツリヌス菌の毒素を脇の下に注射し、汗の分泌を抑える治療法です。
3〜7日後に効果が出始め、約3〜6か月持続します。継続的に受ける場合は、半年〜1年ごとの施術が一般的です。
よくある質問
- 脇ボトックスをすると汗をかかなくなるのですか。
- 完全に汗をかかなくなるわけではありません。気にならない程度まで汗を減らすことが目標です。単位数によって汗をかかない程度は変わってきますので、一度ご相談ください。
- 脇ボトックスの痛みはどれくらいですか。
- 施術前に麻酔クリームを塗布したり、細い針を使用し、痛みを和らげる工夫をしています。痛みの感じ方は個人差がありますが、針を刺す際のチクッとした痛みはあり、痛みに敏感な方はやや強く感じる場合もあります。